この一週間、奈良にある研修所に籠もり、内観療法というものを体験していた。
大学時代にたまたまレポートの分担に当たって調べたことがあり、ちょっと興味を持ったことがあったのだが、昨年、たまたま研修所の所長さんに会うことがあったのが、いいきっかけだった。
この内観療法とは日本生まれの心理療法で、国際学会もあり、最近は中国や韓国で脚光を浴びている。
畳の部屋の隅に屏風を立てて、半畳ほどの空間に座布団を敷き、便所と入浴以外の時間は、その中でこれまでの自分を振り返りながら過ごす。
母親、父親、兄弟、祖父母、配偶者、子供、友人など今までの人生の中で自分と関わりのあった人から対象と時代を決めて、子供の頃からさかのぼって、以下の3点を調べていく。
- お世話になったこと
- して返したこと
- 迷惑を掛けたこと
養育費の計算をしてみたり、「嘘と盗み」というテーマで掘り下げていくこともある。
一時間半から二時間ごとに一回、写真のように指導者が屏風を開けて、5分ほどの面談を繰り返していく。
自分の内面と向き合うことで、その人の仏性(言葉を変えれば、超自我、自然治癒力など)が引き出されていくという。
それで、心身の病気や症状が治ったり、人間関係が改善されたりという結果につながることもあるという。
犯罪者やアルコール依存症患者の厚生、企業の人材育成にも使われている。
さて、私の場合だが、参加した動機は単なる好奇心。
実際に屏風の中で座っていると、雑念が多く沸き起こり、なかなか思考に集中できず、時にはうたた寝さえしてしまうという不真面目さ。(雑念の9割は仕事のことだった。)
良くも悪くも身体には変化はなかったが、これはもともと健康だったからだろう。
同室のウツ症状に悩む人に「そんなにいっぱい寝られてうらやましい」と言われるくらいにたっぷり寝ていたくらいだ。
それでも、自分は一人で生きてきたように思っていたけれど、多くの人々に愛情を注がれつつ、迷惑を掛けつつ生きてきたのだということを改めて認識させられた。
本に書いてあったり、他の参加者の話ほどは、あまり劇的な変化は感じられなかったけれど、なかなか贅沢な時間を持てたのではないかと思う。
数十年、同じように自分の内面を見つめる人々が集う場所だけに、ちょっと不思議な夢を見たりもした。
その手の能力が強い人には何かが見えるにちがいない、と少々邪道なことを考えながら、日本家屋の建物を後にした。