お父さん、私は、知人に紹介していただき、1週間に渡り、奈良県にある「大和内観研修所」に行ってまいりました。「内観」とは、日本で生まれた心理療法であり、仏教に由来するものと聞いております。「心理療法」というと、鬱病や精神病患者のためのもののように聞こえるかもしれませんが、これは全ての人が心安らかに生きるために創られたものです。その方法としましては、部屋の片隅に座り、畳一枚程の屏風に囲まれ、心を静かにさせ、まず母親に対する自分を調べて行きます。ここで肝心なのは、「母」がどうであったかではなく、「母に対する自分」がどうであったかとういことです。調べるポイントは、以下の3つです:「お世話になったこと」「して返したこと」「ご迷惑をかけたこと」
これを記憶のある時分から年齢順に調べていき、母が終わると父、祖父母、姉妹、兄弟、叔父、叔母、配偶者、その親、子、友人、勤務先の上司や部下…と言った具合にこれまでの人生に関わった人たちについて調べていきます。そして、約1時間半毎に面接者が屏風の前に来て下さり、その時間に調べたことを報告するといった具合です。ご自分のことを知らない人に言うのは恥ずかしいと思われるかもしれませんが、心配なさらないでください。面接者はありのままをそのまま受け入れてくださるので、仏様に向かって話している気分になってくると思います。
こういったことを朝から晩まで1週間続けて行います。屏風の中でこのようなことを行うと聞くと、自分には出来ないのではないか、と思う方もいらっしゃるようですが、それは安心してください。しばらくすると、ここは唯一の人生の休息場であり、地球上で一番安全で、心地よい場所だと気づかれると思います。
さて、私もこのようなことを1週間体験させていただき、両親についてそれぞれ2回、叔母さん(母の姉)、そして神様について内観してまいりました。
昔の記憶から辿ってみますと、いかに私がお父さんお母さんから愛され、大切に育てられてきたか、その一端を思い出すことができたように思います。それに対して私は、お二人に何の感謝の意も示さず、あたかも一人で大きくなったかのような顔をして暮らし、本当に申し訳ない思いでいっぱいです。これまでご迷惑をおかけして、本当にすみませんでした。こんな娘ですが、お二人から頂いた愛情を無駄にせず、そしてそれに恥じないように生きていこうと決意しています。
この内観を通して思ったのですが、ひとつ私から提案があります。是非お父さんもこの内観を体験してみてはいかがでしょうか。お父さんは毎日一生懸命働いておられ、さらに土曜日まで仕事をしていらっしゃるので、ひとつここで立ち止まり、ご自分の内を観てみてはどうでしょうか。この内観中に、お医者様が内観について語られたテープを聴く機会がありました。そこで仰っていたことは、「多くの人は皆、死ぬ間際になりこれまでのことを思い出し、感謝の気持ちと共に、安らかに死んでゆく。しかし、それでは遅い。死ぬ寸前に気づくのではなく、生きている途中でそれをしなければならない」と。
おそらくこれは、いわゆる「走馬灯のようにこれまでの記憶を思い出す」ということだと思います。内観は、まさにこれを実行する作業です。すると、この世は苦悩ではなく感謝で満ち溢れた天国であると気づくことができるのです。
内観は、カウンセラーがいて考えを誘導してくれるというものではありません。自分で自分の内を観て、実はこの世界は感謝すべきことがこんなにも多い、と「自分で気づく」ことができるのです。自分で気づくことは大変重要なことであります。普段お父さんはご苦労をなさっているので、楽になっていただくために、経験していただきたいと思います。差し出がましいようですが、これを私の親孝行としてお受け取りください。
最後になりましたが、いつも私の就職先や今後について心配をおかけして、申し訳ありません。しかし私は、後悔のない人生を歩むために、常に自分の内なる声をよく聴き、確信を持って一歩ずつ前に進んでおり、その場その場から常に学び、積み重ねの上に今立っています。おそらく他人様から見たら不安定な人生を送っているように見えるかもしれませんが、私は誰よりも安定した人生を歩んでいると自負しております。何故なら、常に自分の声を頼りにし、自分の心の最も清い真我の自分を見て、考え、選択をし、行動に移しているからです。ですので、絶対的に安心と信頼のある人生になると、何よりも自分自身が絶対的に信じています。しかし、その道中でおそらくこれまでのようにお父さんとお母さんに多大な迷惑をかけていくかもしれませんが、暖かく安心して見守っていただければ幸いです。
長々と読んでいただきありがとうございました。お父さんの健康と幸せをお祈り申し上げます。A子より。