内観と掃除

橋本俊之(大和内観研修所)




 「集中内観で掃除をしてから自宅でも掃除をするようになった。」

 そんな話をよく耳にする。集中内観では、朝の5時に起床してから掃除が行われる。真栄城先生から「トイレの掃除をお願いします。道具はバケツと雑巾です」と丁寧に作法を教わる。眠い目をこすりながら聞いていたが、雑巾の種類が多いことには驚いた。「この部分はこの雑巾で。」「ここはこれで拭いてください。」このようにバケツと雑巾で掃除をする習慣がない。到底、雑巾の使い分けもできるわけがない。しかも、早くしないと最初の面接になってしまう。最初のうちはバタバタやっていたが、集中内観が進むに連れて、キメ細かい掃除が板につきはじめてきた。「ここはこの雑巾じゃない」「ここはこれで拭かなければレッドカードだ」と掃除の職人のように、こだわりを持ちながら掃除をしている自分がいる。とても新鮮で、なんだか楽しい。

 「今日は畳に掃除機をかけてください。」

 恥ずかしながら、生れてこの方、畳に掃除機をかけたことがない。どうやってやるのか分からないけれども、なんとかなるだろうと、いい加減に掃除機をかけていた。なかなかいい気分だ。ある日の朝、奥さんから「畳は目に沿って掃除機をかけてくださいね」と教えてもらう。「そうだったのか。」ちょっぴり自尊心が傷ついたけれども、気を取り直して、掃除機をかける。「おっと、これはなかなか手応えがあるものだな。」知らなくて恥ずかしい感じもしたが、何か課題がクリアされたみたいで嬉しかった。

 掃除は身近なもので、当たり前であると思っていた。でも、一週間続けて、じっくりと掃除をしたのは生れてはじめてだったのかもしれない。とても新鮮で、楽しかったけど、大変だった。自分でやってみて、毎日掃除をしてくれているお母さんは、とても大変だったのだなと、有り難い気持ちになった。