内観と食事

真栄城直子(大和内観研修所)




 内観研修所には、老若男女いろいろな方が訪れます。厳しい修行が待っていると思っているようで、ほとんどの方が不安な面持ちで門をくぐって来ます。ところが、初日の夕食のカレーやおでんなどに、「いやぁー、普通の家庭料理なのですね。一汁一菜というか、精進料理のようなものかと思いました」となぜかホッとした様子なのです。  初日の夕食で不安も和らいで内観がスタートします。食事はお腹を満たすだけでなく、心にやすらぎを与えてくれるものなのですね。

 最近は朝食をトーストとコーヒーだけ、又はコンビニのおにぎりだけで済ませるという方も少なくありません。そのせいか、ごはんとお味噌汁、それに簡単なおかず一品とお漬物というごくふつうの朝食なのに“最高でした”という声を残して帰られる方がいます。また、主婦の方は上げ膳据え膳に悦び、仕事に就いておられる女性は、内観中食事を楽しみに待っている自分を、“今日の夕ごはん何だろう”と、急いで家路についた幼い頃の自分に重ねたようで、「現在の私は、忙しさにかまけてついお惣菜に頼りがちな日々を送っていましたが、食事は空腹を満たすだけではないのですね。これからは出来るだけ子どもたちに手料理を作ってあげます」と笑顔で話されました。

 それと菜食を希望される方もいますが、お肉は勿論、魚、乳製品、卵など動物性ものが一切だめで、おダシも昆布か椎茸のみという方がいました。試食してみると、素材の味だけがするなんとも素朴な味でした。飽食の時代と言われていますが、今ではお寿司も鰻ももう特別な日の食べものではありません。

 『食』を通して内観者の方々と接していますと、今の時代“ごちそう”ってなんだろうと考えさせられます。内観が深まり、周りの方への感謝の気持ちが湧き出たとき、食事が美味しく感じられるようです。  お母さんが作った食事を家族で囲み、感謝の心で頂く、それが一番のごちそうなのかも知れませんね。