内観の国際化を迎えて

真栄城輝明(大和内観研修所)




 今、この国で内観(療法)が俄に注目を集めている。

 たとえば、ちょっと本屋に立ち寄ってみたところ専門書はもとよりであるが、一般書のコーナーにおいても内観の文字を付した本が目に入ってくる時代なのである。

 このことは、1953年に吉本伊信が奈良県大和郡山に内観道場を開設したころに比べると隔世の感を覚えよう。いや、それほど遠い時代でなくて、1978年の日本内観学会(当時は内観学会と称した)が発足した当時と比べてみても内観の知名度は飛躍的に高まっている、と言ってよいだろう。

 ここで本誌を発行している「日本内観学会」の名が出たのでついでに言ってしまうが、第1回大会(京都御香宮)に一般演題として16本の研究発表がなされて以来、昨年の第27回大会(神戸松蔭女子学院大学)までの間、実に521本を数える研究の成果が積み重ねられてきたことを思えば、隔世の感はなおさらに強いものがある。そして、ことのついでにもうひとつだけ記しておくとするならば、本誌は1995年に創刊号を送り出して以来10巻を数えるが、原著論文を中心に特別寄稿や特集論文、あるいは事例報告や論点を組む一方で、学会印象記や資料などを掲載して、内容の充実を図って今日に至っている、ことである。

 ちなみに、今号の特集は時代精神を反映した「倫理」に焦点が当てられている。

 さて、本誌は今号で第11巻目となるが、姉妹たちの活躍も目覚しい。とりわけ、1990年に発足された自己発見の会が発行している「やすら樹」に至っては、なんと第89号を数えたというではないか。一般への啓蒙書としてこれ以上の活躍ぶりはない。うれしいことである。そして、もうひとり忘れてはならない姉妹がいる。その名は「内観医学」と呼ばれ、内観医学会が母胎となって発行している学会誌のことであるが、内観の理論化に向けて取り組む姿勢は頼もしい限りだ。

 さらに、海の向こうでの内観の活躍ぶりも聞こえてくる。

 隣の韓国からは、2003年5月に韓国人間関係学会と共催して第1回韓国内観学会を開催したことが伝えられたかと思えば、同年の9月にはドイツから第5回目の内観国際会議を開催した、と伝えてきた。その国際会議であるが、1991年に世界の9カ国からの参加者を集めて東京で第1回大会を開催したあとは、3年ごとに日欧を中心に開催されている。このように、2003年は、どういうわけか、内観の催しが目白押しであった。10月には、第6回内観医学会と共催で第1回国際内観療法学会までも鳥取で開催されて盛会であった。そして、2004年のトピックを挙げるならば、今、この国で最大の学会員(一万人を超えた)を擁する日本心理臨床学会の大会で、内観の自主シンポジウムが開催されたことであろう。この学会で内観の認知度が高まれば、内観人口の増加が期待されよう。

 人口といえば、世界一は中国だ。その中国の上海は精神衛生中心で、第2回国際内観療法学会が開催されることになっている。今年の2005年11月11・12日の両日のことである。詳しい内容は本誌の中に案内されているとおりであるが、世界の人口の4人に1人が中国人というわけだから、いよいよ内観の国際化は加速を増すことになろう。そうなれば、本誌に寄せられる期待と役割はこれまで以上に重要なものになってこよう。ますます会員諸氏の研鑽と精進が望まれるところである。


(本文は、2005年5月12日発行の内観研究第11巻第1号の巻頭言から転載しました)