内観療法を学ぶ人のためのブックガイド


 【プロローグ】

 表題のテーマを与えられて、思案に暮れていたところ「内観(法)を学ぶには、本よりも実践しかおまへんでっしゃろ」という声がしたので驚いて、あたりを振り返ってみたのですが、誰もいません。声の主は内観法の創始者・吉本伊信のようなので、私は姿亡き師に向かって、こう問いかけてみました。
 「では、ブックガイドは必要ないということですか?」
 ところが、もう何も聞こえてきません。そこで、しばらく思案に沈んでおりました。が、いつまで経っても思案に落ちてこないのです。そのまま思案に余った状態でいました。そして、ついに思案が尽きてしまった瞬間のことです、本のほうから次々と姿を現してくれたのです。つまり、ここに登場する本は、みんな自分から名乗り出てくれたものばかりです。しかも、お互いに本同士で話し合って、次のような取り決めまでしてくれたのです。
 「吉本先生の声にもあったように、確かに内観法は読むものではなく、体験するものだ。内観療法は内観の理論化に頑張ってくれているようだし、今回は前面に出てもらうことにしたらどうだ。内観法と教育内観は中身には触れる必要はないが、存在だけは紹介してもらうことにしよう。」というわけで、今回は心理療法としての内観、つまり、「内観療法」を重点に紹介することになります。そして、みんなで合意したように「内観法」「教育内観」については、最後の方でその存在だけを紹介することになりました。


 【内観療法の入門書】

@「内観療法入門―日本的自己探求の世界―」(三木善彦著・創元社・1976・1600円)は、タイトルに入門と掲げてはいますが、内容は立派な学術書になっています。その証拠に、参考文献として引用される頻度は、常に他の類書を圧倒してきた感があります。1983年の時点で6刷を出していることからも分かるように、内観界のベストセラーの一つに数えられています。著者によれば、目下、本書の第二弾を暖めているそうです。ご期待ください。

A「心身医学療法入門」(石田行仁著・誠信書房・1977・1500円)は、第3章の5節と6節に内観療法を取り上げているだけですが、内観療法と出合った医師の率直な感想が述べられていて、面白くて読みやすく書かれています。他の療法と読み比べてみたい読者にはお勧めできます。

B「内観法入門―安らぎと喜びにみちた生活を求めて」(村瀬孝雄編・誠信書房・1993・1900円)は、タイトルこそ内観法となっていますが、内容の大半は内観療法として読めるものが占めています。1999年の時点で第11刷が出版されていますが、読みやすさも手伝って今のところ一番の売れ筋だと言ってよいでしょう。蛇足になりますが、印税が日本内観学会に入るようにしてくれたのは、ひとえに編者(村瀬孝雄)の計らいによるものです。

C「自分を知りたい 自分を変えたいー内観法入門―」(杉田敬著・星和書店・1998・1900円)もまた、表題は内観法入門となっていますが、内容には臨床心理士としての著者が大学病院や総合病院の心療内科において内観療法を実践してきた事例が紹介されています。

D「楽ないきかた〜感謝から幸福を導く『内観療法』〜」(上野みゆき・文芸社・2005・1200円)を入門書に入れた理由は、文字が大きくて文章も読みやすく、所々に漫画が挿入されているため、内観療法は初めてという一般の読者にもお勧めできると思ったからです。


 【中級編―内観体験後に読む本】

@「死と生の記録―真実の生き方を求めて」(佐藤幸治著・講談社現代新書・1968・250円)は、京都大学教授であった著者が定年退官する1ヶ月前に発刊された本のようですが、その中の第9章に『自己反省に徹し本心に目覚めるー吉本伊信“内観四十年”』と題して吉本伊信と内観が紹介されています。

A「無我の心理学」(竹内硬著・印刷 第一法規出版株式会社・1980・2500円)は、自身も内観を体験された信州大学教授が著した本です。全体で207頁もある本ですが、その中の後編(101-196頁)を内観に割いて紹介しています。

B「内観一筋 吉本伊信の生涯」(日本内観学会編・1989・1800円)は、吉本伊信が1988年8月1日に逝去されたため、同年9月25日に京都の御香宮参集館にて偲ぶ会が開催されました。そして、1周忌の命日(1989年8月1日)に合わせて、偲ぶ会の様子を第一部に盛り込んで発刊されています。

C「内観―こころは劇的に変えられる」(長島美稚子、横山茂生著・法研・1997・1300円)は、内観面接者と精神科医の共著として出版されています。第3章に療法としての「内観」について述べた後、第4章には、内観研修所へ行かなくても自宅で実践するテクニックが紹介されています。

D「内観ワークー三つのキーワードで本当の自分に出会うー」(三木善彦、三木潤子著・二見書房・1998・1500円)は、書名が示す通りにワークシート付きの本です。内観体験者には内観ワークの仕方が紹介されているのが嬉しくなるに違いありません。本書には内観療法という言葉こそ出てきませんが、不登校、摂食障害(過食症・拒食症)の例が紹介されています。

E「内観療法の実践」(笹野友寿著・芙蓉書房出版・1998・1500円)は、自ら集中内観を体験した精神科医が、治療の事例を紹介し、内観療法の意義を説いた本です。事例には解離性障害、身体化障害、摂食障害、抑うつ神経症が取りあげられています。

F「病気でも家族と幸せに暮らせる内観療法―家族内観の方法と実際」(上野みゆき著・光雲社・2001・1600円)では、家族内観療法の効用が事例を通して紹介されていますが、どちらかと言えば、一般読者を対象にして書かれたもののようです。


 【内観療法の臨床家や研究者向けの学術書】

@「内観研究」は、日本内観学会が発行している研究誌です。日本内観学会は1978年に発足されて以来、毎年1回、全国各地で大会を開催してきましたが、1995年4月15日に第1巻第1号を刊行するに至りました。今年の2007年4月15日には第13号を数えますが、大会中に発表された研究発表の中から座長の推薦を得て、精選された論文に加筆がなされたうえで掲載されていますので、臨床家や研究者にはお勧めです。

A「内観医学」は、1998年に発足した日本内観医学会が発行している専門研究誌です。両書は通読すると言うよりも、臨床家と研究者の本棚には必携の研究誌であり、必要に応じてページを捲ればきっと役に立つこと請け合いです。しかし、両書は一般の書店では取り扱っていません。それぞれの学会事務局か内観センターにお問い合わせください。

B「内観療法」(奥村二吉、佐藤幸治、山本晴雄編集・医学書院)は、1972年1月に第1版1刷が出版されていますが、現在は絶版となっています。

C「禅的療法・内観法」(佐藤幸治編著・文光堂)は、同年の9月15日にサイコセラピー・シリーズの一つとして出版されました。両書によって内観は、内観療法としての認知度を高めたと言う人もいるくらいですが、これも絶版です。

D「原事実について」(奥村二吉著・岡山大学医学部神経精神医学教室・1985)は非売品となっていますが、相当なプレミアがついてもおかしくない名著だと言われています。岡山大学医学部教授を定年退官された著者の満80歳の誕生日を記念して出版されたようですが、内観について思うことが書かれてあり、一読の価値があります。

E「瞑想の心理療法―内観療法の理論と実践」、現代のエスプリ202号(竹元隆洋編著・至文堂)は、1984年に出版されました。内観療法の基本原理や治癒機制を論じた論文、さらには他の精神療法との比較を試みた論考などが盛り込まれて、多彩で興味深い内容が並んでいます。内観臨床の第一人者である編者による解説や考察も定評があり、読み応えも十分です。

F「内観 理論と文化関連性」(村瀬孝雄著・誠信書房・1996)は、著者の村瀬孝雄が自ら内観を体験して以来、28年を経てまとめた大作です。内観療法の理論化を試みた素直論など、日本文化との関連で考察した数々の論考が納めてあり、内観の専門家にとっては必読書の一つだと言ってよいでしょう。

G「内観療法」(川原隆造著・新興医学出版社・1996)は、大学のテキストに最適な内容になっています。まず、内観療法関連の用語を取り上げ、著者なりの再定義を試みることをはじめとして、各種心理テストや生理学的検査所見、内観療法の治療機序、各疾患別への適用について解説しているからです。

H「内観療法の臨床―理論とその応用」(川原隆造編・新興医学出版社・1998・7500円)は、総勢31名の臨床家と研究者によって執筆された、それこそ専門家向けの学術書であり、値段は高額にはなっていますが、内観の臨床家や研究者にとっては欠かせない豊富な内容が盛り込まれています。

I「心理療法の本質を考えるー内観療法を考える」(川原隆造、東豊、三木善彦編・日本評論社・1999・2300円)は、類書に例のない内容となっています。具体的には、鳥取大学医学部で開催された内観療法シンポジウムにおいて、内観療法の事例報告が行われ、それに対して、精神病理学、精神分析学、認知行動療法、ブリーフセラピーの第一人者が自派の療法の核心から内観療法の有効性を検討し、吟味するという画期的な試みが実現され、それを収録したのが本書になったからです。

J「東洋思想と精神療法―東西精神文化の邂逅」(川原隆造、巽信夫、吉岡伸一編・日本評論社・2004・2500円)もまた、学会のシンポジウムと講演を収録して出版されたものです。ここでの学会は、2003年10月10日〜12日に米子コンベンションセンターで開催された第1回国際内観療法学会・第6回日本内観医学会のことです。執筆陣はアメリカ、中国、韓国、そして日本の4カ国で構成されていて、まさに東西精神文化の邂逅が実現されています。

K「心理療法としての内観」(真栄城輝明著・朱鷺書房・2005・2800円)は、内観のルーツから治療構造、臨床応用まで、長年の臨床探求から得られた成果を集成したもので、内観を通して心理療法の真髄に迫ろうとしたものです。巻末には、これまで出版された内観関係文献の一覧が掲載されています。

L「内観療法の現在―日本文化から生まれた心理療法」(三木善彦、真栄城輝明編・現代のエスプリ・至文堂・2006・1381円)は、表題のテーマでメール座談会が行われ、内観療法の歴史を振り返りつつ、各分野における内観療法のあり方についても話し合われています。具体的な内容は以下の通りです。
 <内観療法の実践の現在><カウンセリングと内観><教育と内観><内観療法の本質><内観療法研究のトピックス><内観療法の展開><内観療法の展望>などが、それこそ多彩な論陣によって紙面を飾っています。

M「内観法―実践の仕組みと理論」(長山恵一、清水康弘著・日本評論社・2006・7600円)は、内観体験の展開を内観原法のプロセスに即してきわめて具体的かつ丁寧に論じた話題作です。本書の主題は内観法のようですが、内観療法についても他の療法と比較しながら理論化しつつ、心理療法それ自体への提言を試みるという意欲作であると同時に、大作になっています。


 【内観法に関する本】

@「心の探検―内観法」(楠正三著・桐原書店・1975・1500円)

A「不安からの脱出―人生を変える内観法入門―」(楠正三著・ブレーン・ダイナミックス・1977・950円)

B「東洋の知恵・内観―こころの洗濯法」(金光寿郎著・光雲社・1984・1500円)

D「驚異の自己活性法―『内観法』入門―」(柳田鶴声著・同友館・1985・1300円)

E「愛の心理療法 内観―よろこびとやすらぎの世界」(柳田鶴声著・いなほ書房・1989・1300円)

F「禅と内観―不安と葛藤の中を生きるヒント」(村松基之亮著・朱鷺書房・1991・1545円)

G「家族―心のメッセージ」(清水志津子著・いなほ書房・1995・1500円)

H「内観実践論―自己確立の修行法」(柳田鶴声著・いなほ書房・1995・1300円)

I「忘れていた“心の宝”と出会える本―『内観』であなたも生まれ変わる」(三木善彦著・同朋舎・1997・950円)

J「健康と内観法15章」(草野亮著・アテネ社・1997・1500円)

K「内観法はなぜ効くかー自己洞察の科学」(波多野二三彦著・信山社・1998・3000円)

L「一週間で自己変革『内観法』の驚異」(石井光著・講談社・1999・1400円)

M「証言集 吉本伊信と内観法1―吉本伊信との五十年」(塩崎伊知朗、竹元隆洋編 証言者 中田琴恵 吉本キヌ子 長島正博・日本図書刊行会・2000・1500円)

N「家族・友達・仕事のために自分を知ろう」(西田憲正著・内観双書・2001・1575円)

O「心理臨床からみた心のふしぎー内観をめぐる話」(真栄城輝明著・朱鷺書房・2001・1600円)

P「内観法と吉本伊信―幸福の発見法を確立した人―」(宮崎忠男著・近代文芸社・2001・1000円)

Q「内観で<自分>と出会う」(長島正博、長島美稚子著・春秋社・2001・1800円)

R「内観に救われてー愛の再体験―」(三宅忠六著・文芸社・2006・1300円)


 【内観教育】
@「子どもが優しくなる秘けつー3つの質問(内観)で心を育む」(石井光編著・教育出版・2003・1800円)

A「思いやりを育てる内観エクササイズー道徳・特活・教科・生徒指導での実践」(国分康孝、国分久子監修・飯野哲朗編著・図書文化・2005・2000円)


 【内観に関するその他の本】

@「花のいのちー人を愛し、歌を愛して」(島倉千代子著・みき書房・1983・1000円)

A「あなたもとりゃんせーこのみち五十年」(水野秀法著・柏樹社・1983・1200円)

B「答えは自分の中にー人生案内の窓から」(三木善彦著・ブレーン出版・1995・1500円)

C「『反省・内観』で心を知る」(助安由吉著・エイト社・1998・1000円)

D「人は何によって輝くのか」(神渡良平著・PHP研究所・1999・1500円)

E「内観の霊性を求めて(1)―心の内なる旅」(藤原直達著・カトリック内観研究会発行・2002・非売品)

F「内観の霊性を求めて(2)―心の深海の景色」(藤原直達著・カトリック内観研究会発行・2004・非売品)

G「内観の霊性を求めて(3)―ナムの道もアーメンの道も」(藤原直達著・カトリック内観研究会発行・2005・非売品)


 【吉本伊信が著した本】

 ここには、一般の書店で入手できるものだけを記しておきます。

@「内観法」(吉本伊信著・初版は「内観四十年」として1965年に出版されるが、2000年に新装改訂されて、初版同様に春秋社から出版された。2000円)

A「内観への招待―愛情の再発見と自己洞察のすすめ」(吉本伊信著・朱鷺書房・1983・1200円)



【エピローグ】 

 周知のように、吉本伊信は自身を内観のチンドン屋と称して、生涯を内観普及に捧げました。「内観の理論化は学者(研究者)の先生方にお任せしたいと思います」と言って、自身は内観の実践に重きを置いて、内観三昧の生活を通しました。別の言い方をすれば、吉本伊信は行動の人でした。全国各地へ出かけて行っての講演活動はもとより、篤志面接員として奈良少年刑務所に精力的に通ったことも有名な話です。

 また、多数の書籍や小冊子だけでなく、テープ(カセットやビデオ)なども遺しています。吉本伊信の声が聞きたいという方や資料が必要な方は、直接、内観センター(奈良県大和郡山市高田口町9−2・пF0743-54-9432)までお問い合わせくださるとよいでしょう。


(本文は、「内観療法」三木善彦・真栄城輝明・竹元隆洋編著・ミネルヴァ書房・2007,10,20発行 より抜粋して掲載いたしました。)